歴史

戦後史の正体

戦後史の正体

友人から「日本の戦後史の見方が変わっておもしろいよ」と薦められ、手にとってみた。

著者である元外務省・国際情報局長の孫崎享さんが「高校生でもわかる本」を意識され、戦後の日本の外交史をアメリカへの従属路線と自主路線に分け、それぞれの首相の立場や活動を明確にしてくれている。

自身がそうだが、普段政治にあまり興味のない方でも
今までにない新しい視点や気づきを与えてくれる、貴重な作品だと思う。

この本の内容をすべて鵜呑みにできるとは限らないが
教科書に記載できないこと、その内容からの逸脱、そして、メディアによる情報規制・操作を再認識させられた。

この著作のおかげで個人的には岸信介首相への見方がとても変わりました。

個人的に気になった事柄を他に2点ほど。

  • 「第二次世界大戦の終戦日は?」と聞かれれば、日本国民のほとんどが「8月15日」と答えるが、日本以外の国々は東京湾の米国艦上で降伏文書調印式が行われた「9月2日」と認識している事実。
  • 北方領土の「国後島」と「択捉島」は第二次世界大戦中に旧ソ連が戦争に参加することを条件として米国が旧ソ連にプレゼントしたものであるという事実。

ここまで記してくれた著者のその勇気に敬意を表するとともに
歴史の光と闇、陰と陽、明と暗、しっかり物事の二面性を頭に入れ、
最後は自分の頭で考え判断する責任がある、という示唆を与えてくれました。

二十一世紀に生きる君たちへ

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(司馬さんの書斎)

「二十一世紀に生きる君たちへ」は
司馬遼太郎さんが自身の晩年に、未来を担う子どもたちに向けた書いた文章のタイトルです。

この文章を書き終えたとき、
司馬さんは担当の編集者に「長編小説を書くほどのエネルギーがいりました」と話したそうです。

自然のこと、人間のこと、歴史のこと、
この文章に触れるといつも心が洗われる感じがします。

以下、一部抜粋。

「むかしも今も、また未来においても変わらないことがある。そこに空気と水、それに土などという自然があって、人間や他の動植物、さらには微生物にいたるまでが、それに依存しつつ生きているということである。
自然こそ不変の価値なのである。人間は空気を吸うことなく生きることができないし、水分をとることがなければ、かわいて死んでしまう。
さて、自然という「不変のもの」を基準において、人間のことを考えてみたい。
人間は、 ーくり返すようだがー 自然によって生かされてきた。古代でも中世でも自然こそ神々であるとした。このことは、少しも誤っていないのである。
歴史の中の人々は、自然をおそれ、その力をあがめ、自分たちの上にあるものとして身をつつしんできた。」

司馬さんの作品にお世話になっている人は、ぜひ一度は大阪の司馬遼太郎記念館に足を運んで欲しいです。
本人の当時の書斎、高さ11メートルの書架とそこにおさまる約2万冊の蔵書を眺めているだけでも普段味わうことができない気持ちを味わうことができるのではないか、と思います。